実は、ホンネの部分ですごく気になっています。ふだん他のことだとキレのよい分析をしている方も、今回の中国の反日デモについては、極端に無口です。
「まずいことになっているなー」というため息があると思う。この「ため息」の部分で、かなりの数の人が、「なるべくならあの国に近寄らないように、また、語らないでやっていこう」と心に決め始めていたりするのではないかと想像しています。「敬して遠ざける」、わけです。理解できない相手とは、説得も喧嘩もできませんから。何回、ニュースに出てきてもそれについて語らない、ということはそういう意味だろうと。
自分も、これについて特に語りたいことはありません。しかし、いくつか拝見したネット上の言説の中に、かなり納得できるものがありました。今日はそれを紹介します。
1.中国共産党内の特定党派主導の、ある意味、やらせ説
こういう分析はあちこちにあるようです。納得度50%ぐらい。中国政府ではなく、
中国共産党内の特定党派、というところに注目。政府組織や学校、会社などとは別に、党が二重組織で活動しているのが現在の中国。
これが政府高官たちの目的意識とはまた微妙に異なる戦略ロジックを持って動いている。中でも、大学などの学生や研究者の中にある共産党組織や政府内に拠点を置く特定党派が微妙に連動して動いている可能性大。
大使館等に対する投石や若干の破壊行為については、なんら阻止されることなく、なすがまま放置の警備陣はあらかじめそのように命令されているのが普通に理解できる。
しかし、デモに行こうというメッセージを若者に発信すると同時に、投石程度なら逮捕してはならない、という指示/命令を警備側の警察に、同じタイミングで出せる組織は、共産党内の党派組織以外にない。帰りのバスまで用意して、送迎付きデモというのもすごい仕掛け。職能的に異なる複数の共産党細胞組織が地下で合作/連動して実施しているキャンペーンだ、ということ。事態の理解はこれでいいのではないでしょうか。
2.「やらせ」に乗る背景の理解
一方で、こうした「やらせ」に乗る背景もあり。これについて一定の解釈をしてくれたのが、ひとつは
内田先生の「反日デモの伝える声」。わかるような、わからないような感じでした。納得度5%。
今日になって発見した、さらに納得のいく見方が「こころ世代のテンノーゲーム」umetan氏による記事
「『中国』というセカイ系」。納得度35%。ほぼ、氷解です。
つまり、「セカイにおける国家とは常に軍事独裁を志向するものであり、だからこそ日本に対して常に危機感を持ち続けねばならないのだ」という、セカイ系的な意識がデモの参加者の共通認識となっているのだということである。
そして、その意識から答えとして導き出される意識とは、
「われわれのデモは日本の軍事独裁化に危機感を表明し、それを防ぐためのものであって、われわれがデモを起こすからこそ日本の軍事独裁化に歯止めがかけられているのだ」というものである。
それはつまり、かのデモ参加者は心のどこかで「このデモは日本のために行っているのだ」「日本国民はむしろわれわれに感謝するべきだ」という意識を抱いている可能性があるということである。
そして、そのメッセージは、もはや軍事独裁国家ではない日本に、その毒を嫌と言うほど飲まされた日本国民には、まったく通じるものではないのである。
「セカイ系」についての説明は
ここ。
実際の「世界」ではなく、本人のセルフイメージが勝手に描き出した、自分ひとりよがりな「世界のイメージ」を語るとき、「セカイ系」という言い方で説明されるようです。心理学的には「自己愛」の一種ということになるのかな。
いまの中国の動きを、安保反対を叫んでいた60年代とか70年代の対米意識と比較する人もいますが、共産党の制御配下で動いている点で本質的にはまったく違う感じがする。
…「政治的セカイ系」ってことなんだろうな。ああ、なんか意味不明ですみません。
中国人とこの件について話をするとき、どういうロジックでやりとりしたらいいかも、少しだけ分かる気がしてきました。
それにしても、向こうで仕事をしている日本の方は大変ですよね。
3.共産党の主導による今回のキャンペーンは成功したか
2のumetan氏の解説にもあるように、右寄り、左寄りの区別なく、我々のほとんどが、戦前の体制への回帰や、中国/韓国が言うところの軍国化は、あまりに日本人そのものに対する犠牲が大きいと把握しているため、痛くない腹をこれでもかと探られて当惑する人や、逆に、事実誤認に対して怒りを覚えている人すらあるため、対日工作活動としてはほぼ完全に失敗。
「わけのわかんないことを言う連中」ということで、距離感がさらに遠のいて、一般人のレベルだと観光収入などに悪影響が出ると思われる。ただ、日本からの投資額を抑制するための高度な戦術だったりすると、成功、ってことになるのかもしれない。
一方、反日的な意識を強く持っている中国の旧政権の残存勢力の反日=愛国意識のガス抜き、という視点からは一定の効果を得ているのかもしれない。
ガス抜き説が正しいとすれば、制御がきかなくなり破壊行為が拡大したとき、オリンピックその他の国際的イベントの失敗につながる恐れがあり、そのときは、現政権は引責で倒れる可能性さえある、という見方もネットで拝見した。さらに進んで、現政権の倒壊をもくろむ極左(?)グループがそもそもこうした画策をしているのではないかと見ているblogも拝見した。
それにしても中国。でかすぎるのと、深謀遠慮の国なので、単一の意志を想定する自体がむずかしい相手ですよね。
※最近、メディアの将来について、あれこれと書き込みをしました。ぜひメディアから提供してほしい役に立つ情報ということで考えてみると。
中国で自分が仕事をしているとして、若い中国人から議論をふっかけられたり、取引先との宴会で、こうした話になったとき、どういう論陣をはって相手を傷つけず、納得せしめるべきか、というハウツー記事、期待できないでしょうか。えっ、土下座? まあ、後腐れなければ、別にいいですけど。もっと割引して半額で納品しろ、とか、60年ぐらい前の残虐非道を反省してバイト代を倍にしろ、なんて発展したらいやじゃないですか。
結局、こういう肝心なところで、既存メディアの見えない制限枠がどうしても見えてきてしまうのだが。
※追記
CIA謀略説というのをネットで見ました。
この読売の記事あたりが発端でしょうか。
天安門事件で米国に逃れたCIA影響下の在米中国人が、掲示板経由でデモをたきつけた、というのです。反日デモをそのまま民主化デモへと、流れを変えていくことが目的、だとか。
まったくありえないストーリーと言い切れないところに、あの国の大きさも感じてしまいます。