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【2006.02.24 Friday 】 author : スポンサードリンク
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SNSを科学する試み その2--Mayfield's Model
■いままでのまとめから今回の話へ

前回からちょっと長く時間をあけ過ぎてしまいました。

前回までの話では、ヒトの群の理論的サイズであるDunbar Number(ダンバー数)の150という値が、どういうロジックの中から算出されたかを、Dunbar氏本人のペーパーをたどりつつ説明しました。また、ヒト以外の霊長類ではグルーミング(毛づくろい)に生活時間の半分前後(Dunbarの観察では42%の時間)をとり、群の集団維持をしていると思われることも述べました。

一方…、

毛づくろいの習慣のないヒトは、言語を使って群の中での意思疎通や群の維持を行うのだろうと考えられています。ここから先は、霊長類ヒトだけに限った話になります。

■群れサイズのスケーラビリティ

さて、人間の、150という群サイズの理論値についてはこれまでの話でまとめました。

ところが、実際の我々の行動を自問自答したとき、実際のヒトの群(グループ、人間集団)は、ふだん、はるかに小さな群サイズで動いていることもあるし、また別の機会には、1000人、10000人、さらには宗教単位、国家という抽象的な群サイズさえ意識した動き方をしています。

大きくもなれば小さくもなり、急に集まったかと思えば一気に離散してしまうことさえあるヒトの群れの不思議。どなたでも考えるとおり、言語を使うことによって、群サイズは、大きくもなれば小さくもなるという、まさにスケーラビリティを実現したといえるのではないでしょうか。

言い方を変えると、「グルーミングによる群の維持から、言語による群の維持へ移行」する途中で、「群れサイズのスケーラビリティ」が獲得されたと考えると納得ができそうです。スケーラビリティとは、この場合、サイズが急に大きくなることがあるだけでなく、急に小さくなることもある、という二つの意味を持っています。


■つかみどころのないヒトの群れの特性

ヒトの群れは、大脳の新皮質といった物理的な量とシンプルな形では決して連動することのない、つかみ所のない複雑なものらしい、ということはなんとなく理解できました。

霊長類の場合、42%もの時間をついやしてグルーミングを行い群れの維持をしているそうです(Dunbarによる研究結果)。ヒトの群れでも、命のかかっている古代の軍隊組織や付き合いが非常に密な昔の集落など、この150に近い数字が出ている例もあるそうです。しかし、現代人が日々の生活で目にしたり、自分で体験している群れのサイズは、もっと小さなものです。

この分野でソーシャル・ネットワークに関連したモデルを考えているRoss Mayfield(ロス・メイフィールド)は、「ネットワークのエコシステム」として、ヒトの理論的な群サイズを修正し、より実態に近いDunbar Numberを割り出そうとしています。下記の表がそれです。





From "Ecosystem of Networks" by Ross mayfield



以下に、個々のモデルを詳しくみていきましょう。

■創造的ネットワーク

ソフトウェアを開発しようとか、事業をおこそうといったクリエイティブな仕事では、極端にいうと10人未満、最大でも12人程度までの、夕食をいっしょにとりながら話をするようなサイズで、たしかに人は動いています。ただ、12人という数字をメイフィールド氏がどこから出してきたかはわかりません。私の回りの企業人の感覚では、新しいプロジェクト作りは5人程度から出発という声さえ聞こえてきます。

"Life with Alacrity"blogのChristopher Allen氏は、少人数でのクリエイティビティは認めながらも、少数での問題点も述べています。

・二人だと確かに意思疎通は円滑だが、リソースがそもそも少ないため、早い時点で人数を増やす方向に動いていかざるをえない

・三人だと基本的に不安定な関係になりやすい。二人がくっつき、残りの一人が余ってしまう、という懸念がある

・経験的には5人ぐらいからチームという雰囲気が出てきて、8人ぐらいまでは、お互いに意見を言える感じ。

・9人から12人になるにつれて、これがうまくいかなくなるような雰囲気。これを超えると、お互いに専門に分かれた役割分担が必要になり、相互にレポートを書いたりする必要が出てくる。

・25人を過ぎると、単純な形での部署も必要になり、個々の内部グループも5-9人程度になって、最初に出てきた小グループでのダイナミックな意見交換が、今度は、内部グループの中で始まるようになる

(以上要約)
from http://www.lifewithalacrity.com/


■政治的ネットワーク

次に、数の上では最大数が数千人以上の政治的ネットワーク。ここに、政治、宗教などの信条の下に集まる群れが分類されてくるのでしょう。

一般的な特徴として、分かりやすい主張をドンと前に出して、この主張の回りにたくさんの人が集まってくるネットワークです。

ここでの分布法則はべき乗型だとされています。つまり、数が極端に集中している密集型と、非常にまばらな閑散型が共存しているが、密集型はごく少数で、大多数は閑散型。そして、これをグラフにプロットしたとき、べき乗の関数と同じような形になるとされています。

また、見方を変えると、べき乗型(Power-Law type)とは、「20/80」ルールなどともいえる、資源偏在の法則です。

blogを例にとると、「20%ほどのblogが、この世のすべてのトラックバックの80%を占有している」とか「10%ほどのblogが、この世のblog読者の90%を集めている」といったような、偏在の法則、不平等の法則です。

実際にそれをカウントした人はいないとしても、あたかもそういう「20/80」ルールや「10/90」ルールが起こっているかのように、感覚的に見えてしまう、ということではあります。HPOのひできさんは、「SNS、greeの参加者の居住地の80%が上位20%ほどの都市に集中している」というべき乗の法則を、Excelで実際に割り出しています。

ocnがBlogzine(ブログ人)というサービスを開始したとき、日本沈没という企画を立てました。トラックバック数が少ない県がだんだん色濃くなって沈んでいきます。この企画に、思うところがあって私もややきついコメントを付けてしまいました。

後で見て、あまりに辛辣な書き方であった、と少し後悔しました。幸いなことにBlogzine担当者の方からも温かいコメントをいただき、今に至っていますが、これもよく考えてみると、まさに「べき乗の法則」がらみの話が背景にあります。

・人口の大都市集中
・blogユーザーの大都市集中
・地方都市の中での自動車普及によるショッピングセンター一点集中


こういうものがすべて「べき乗の法則」として見えてきます。当然この背後には、

・人口の上での地方の過疎化
・地方でのblogユーザーの過疎化
・地方都市内での既存商店街の没落


という、もうひとつの側面が見えてきます。

ゲームデザインをしている Raph Koster(ラフ・コスター)氏によると、ネットワーク・コミュニティの中でも、こうしたべき乗の法則がよく見られるとのことです。ウルティマオンライン(UO)の中にあるギルドのサイズが巾乗の法則によく合致しているというのです。


From "Life with Alacrity"blog by Christopher Allen
http://www.lifewithalacrity.com/


blogでの例を考えてみると、一種のマスメディアのような存在に近くなっていきます。たとえば、日本では、木村剛氏のblogがこのサイズではないかと思います。現時点では政党がらみではないというだけで、内容自体は、現役の政治家主催のblogよりもはるかに政治的な「日本ゴーログ党」blogという感じです。

木村さんは、「blogはメディアになれるか?」というタイトルでアーティクルを書いていますが、まったくの確信犯。マスメディアというよりもネオメディアにしてやるぞ、という覚悟がみなぎっており、いまも面白いですが、実は将来がもっと楽しみです。

いまのところ、木村剛氏は政治家生活を始める意志は見せておられませんが、仮に出馬を決心した、と同氏がblogに書いたとしても、だれも不思議には思わないでしょう。

そういう意味で、メイフィールド氏の分類にあるとおり、ポリティカル・ネットワーク(政治的ネットワーク)の例として見ることができます。

既存のマスメディアにはない明確な主張や人を巻き込むためのロジックがあり、しかも、そこにだれでも参加できるため、たくさんの人の支持を受けているだけでなく、白熱した議論の焦点にさえなっています。


■政治的ブログと政治的ネットワーク

人に会って握手したりすることがいままでの政治家の仕事だとすると、blogに返事を書いていくのは次の世代の政治家の仕事です。blogを始めたとたん、相手から投げかけられるコメントやトラックバックからは逃げようもなく、真正面から議論に応えなければならなくなります。


■ポリティカル・ネットワークの特性

腹芸ということばがあります。ここでいう「腹」が伝統的な政治家同士のプロトコルで、そこで必要になる技能が「腹芸」だといってかまわないと思います。

一方、blogでの相手はたくさんの「普通の人々」です。

この「普通」というのは、平均的とか、どこにでもあるという意味での「普通」ではありません。「シャバ」そのもの、世の中そのものです。

ですから、この中には大学院を出たインテリもいれば、近所のたこ焼き屋でバイトをしている若者だっています。また、リンゴ園を経営する農家の三代目青年もいるでしょうし、団地に住む主婦や、病院で仕事をする看護婦さんだっているでしょう。

人々は多様であり、自分の身の回りを含むさまざまな広い知識やきめこまかな経験を持っており、その結果、いろいろな意見を持っている、という意味で「普通」なのです。

blogの中では、伝統的政治家の専売特許である「腹芸」など、もはや通用しません。それぞれに専門分野を持っている「普通の人々」の前では、政治家同士の腹芸ではなんとなくごまかしがきいたり、見逃してもらえる言い方も、「普通の人々」の持つ極端に深い専門的知識や「倫理感」や「とぎすまされた批判精神」の前では、こっぱみじんに粉砕される可能性さえあります。

「普通の人々」のこうしたすごさを、実は多くの政治家先生やマスコミで働く人々も、ひょっとするとご存じないのではないかと思います。

「普通の人々」からの意見、反論には、明確なロジックを組み立ててすばやく返答するだけでなく、場合によっては、そのメッセージの中に、ある種の「やさしさ」、「愛嬌」、「ジョークのセンス」さえ必要かもしれません。また、場合によっては、その発言の余りの重さに、「少し考えさせてくれ」と泣きを入れた方が誠実である場合さえあるように思います。

アメリカであれば、こうした政治系のblogは、まさに政治家その人が運用している例もあります。今回の大統領選挙では、民主党のケリー氏と最後まで争ったディーン氏が、blogを舞台に対話を継続し、たくさんの人々を引きつけました。

http://blog.deanforamerica.com/
http://www.blogforamerica.com/

なぜ、ここで腹芸の話から始めたかといいますと、ここでいう、数千人単位の政治的ネットワークとは、「腹芸」という言葉に代表される伝統的な政治のプロ(伝統的政治家)のネットワークとは全く異なるものだ、と言いたいからなのです。

これを、ある人は、「創発民主主義」と呼んでいます。ネットワークというベースを得て、いま、創発民主主義が、日本でもゆっくり立ち上がろうとしているなと、私は感じています。それがここでいう「政治的ネットワーク」のことです。

インターネットがらみに限定すると、こうした数千人規模から始まる、インターネットをうまく利用したネットワーク作りに成功したことのある政治家は、まだ日本には登場していないのではないかと思います。

成功すると、選挙のプロも顔負けの、非常に伝搬力の高い選挙運動を、非常にスピーディに展開することができるはずです。そのとき、政治の流れは激しく代わり、新しいタイプの政治家が国会に送り込まれるはずです。

現在のところ、日本でも、まだ数が少ないのですが、何人かの政治家の方のチャレンジで、いくつかのblogが登場しています。

ふじすえ健三さんのblog




■ソーシャル・ネットワーク

さて、メイフィールド氏の分類で、特にわかりにくいのがソーシャル・ネットワークと書いてある、真ん中の、正規分布型のタイプです。

正直なところ、オリジナルのDunbar Numberとは違って、このあたりのロジックの組み立てがどうにも確信が持てません。最大の政治的ネットワークと最少の創造的ネットワーク以外のすべてがここに入っている感じ、とでもいいましょうか。

このあたりの議論が盛んになされていたのは昨年の二月あたりのようですので、メイフィールド氏だけでなく、同時期にこのテーマに反応していた人々のblogも引き続き追いかけて、もう少し考えてから続きを書くことにしましょう。


■ヒトはヒトスジナワではいかない

人間の行動をロジックで説明しようとすると、必ずどこかでズレが生まれて、理屈に合わないことが見えてきます。ロジックだけで分析するのは大変です。どうやら、ヒトは、一筋縄ではいかないのです。

最低限言えることは、言語を使うことで、群れ形成のための物理的、時間的制約を一気にとかれ、非常に自由度の高い群れ作りのパワーを、ヒトは入手した、ということです。そして、メイフィールド氏が提示している「ネットワークのエコシステム(生態系)」の分類は、ひとつのたたき台としてかなり有効だなと考えています。
【2004.05.26 Wednesday 21:18】 author : katz
| 人とblogとソーシャルネットワーキング | comments(5) | trackbacks(7) |
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【2006.02.24 Friday 21:18】 author : スポンサードリンク
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この記事に関するコメント
記事を興味深く読ませていただきました。
ひできさんのブログから飛んできました。

新しもの好きだけど、あまり知識のない私にもブログとSNSは何か世の中を変えていくツールだぞというのは直感で感じていました。

実際自分もブログを始めてから色々な未知の出会いとか、奔流に飲み込まれそうな局面が沢山あって、自分でもまだとまどっている段階です。

自分で色々と体感したいと思っています。木村氏の狙っている政治的奔流になったとしたら、ほんとうにすごいと思いますし、後押ししたいと思います。
| Hiroette | 2004/05/27 12:43 AM |
miyakodaさん、こんばんわ、

これむちゃくちゃ面白いですね。夕食の濃い会話の人数のあたりに、私がもとめるものがありそげに感じております。

いま、もうすこし「実証」に使えるデータと、ノードからのシュミレーションを組める環境がないか、探しております。ぜひお知恵をください。
| ひでき | 2004/05/27 12:47 AM |
おー、Hiroette様、いつも拝見しております。コメントありがとうございます。blogをはじめてから、私も、いままでにない出会いをたくさんしております。

ひできさん、どーも〜。このアーテクル、実は、何回も書きかけては保存し、書いては保存し、かれこれ3週間ぐらいたっているのかも。んで、まとまっていないのですが、見切り発車で出してしまいました。
| miyakoda | 2004/05/27 1:37 AM |
miyakodaさん、こんにちわ、

ああ、昼休みが終わってしまう...

Hiroetteさんとほぼ同時コメントですね。なんか最近偶然とは思えないことが身の回りで起こりすぎなんですけど...

ともあれ、Maoさんからすごいコメントいただいてしまいました。ぜひぜひ、miyakodaさんのご意見をうかがわせてくださいませ...お願いいたします。
| ひでき | 2004/05/27 1:04 PM |
インフォバーンの羽田と申します。
メールアドレスが分からなかったので
こちらにコメントさせていただきます。
『月刊!木村剛』の件でお願いさせて
いただきたいことがございます。
恐れ入りますが、haneda@infobahn.co.jp
までご連絡をいただけませんでしょうか。
お忙しいところ、誠に恐縮ではございますが
よろしくお願い申し上げます。

株式会社インフォバーン 羽田法子
| 羽田法子 | 2004/06/13 3:21 AM |
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